小説

小説

曽根崎の友達。[短い小説]

講義が終わって曽根崎は、カフェテリアに向かった。カフェテリアには、友人の竹下がいた。彼は、曽根崎には気がなかった。それでも、いつものように曽根崎は、竹下に話をする。竹下は、途中で席を立つと、曽根崎は体の震えが止まらなくなった。
小説

異常なひと。[短い小説]

明らかに、異常であるのは周りのほうなのに、自分ひとりが異常者のように扱われる。「私」の一日は、すでに異常の始まりだった。自分だけ正しい恰好をしている会議。誰もそれを指摘しない。買い物に出かけても、明らかに間違った行為が正しいとされる。異常なのは周りか、自分か。
小説

先生の風景 【短い小説】

先生の風景画。毎日の買い物にいく往路で高校時代の先生が絵を描いていた。はじめ声を掛けるのを遠慮していたが、しばしば目が合い、相手も見知ったような顔をするので、私は声を掛けた。先生は動作が鈍く病気をしているようだった。声を掛けてからは、先生の姿は見ることはなくなった。
小説

ベーカリーにて。 【短い小説】

ベーカリーのカフェで詩を書くようになった。家の仕事部屋では気が急くし、図書館は静かすぎて気が散る。カフェがちょうど良かった。しかし、この日、車さんに話しかけられて詩を中断しなければならなかった。彼女の夫は失踪したのだ。私はそこから新しい詩を思いついた。
小説

似ているひとたち。[短い小説]

真田晋平は、会社でひどい扱いを受けていた。部長も主任も彼を侮辱して、人格を否定した。その理由も彼には分からなかった。気持ちが病みそうになったので、彼は会社を辞め、別の職場に変わった。そこに働くひとたちは誰かに似ている気がした。彼は自分自身が分からなくなった。
小説

病院の学者 [短い小説]

食堂で田野瀬は、桑原さんと隣り合って座った。桑原さんはいつも分厚い本を持ち歩いている。この日も、彼はその本を食堂のテーブルの上で開き、読み始める。本のタイトルは「東方キリスト教の歴史」というものだった。桑原さんは自分が神学者といっていた。やがて浅川さんも食堂に入って来る。